現役阪大生が、留学のREALや留学の体験談をつづります。

試験前最後の授業はディベート!? 印象的だった留学生向けクラスについて

お久しぶりです!オランダ・グローニンゲン大学で留学中のひーやんです。

8月末に渡航してからまもなく2ヶ月が経ちます。
私の学ぶ大学はクオーター制(4学期制)のため、それぞれの学期のサイクルが早い!あっという間にはじめての期末が近づいてきました。

つい昨日、2ヶ月間学んできたメインのコースの最後の授業がありました。そこでいろいろと思ったことがあったので、記事を通じてシェアしたいと思います。

 


最後の授業「Role Play」とは?

留学先では、Faculty of Spatial Scienceという学部で、人文地理や都市政策について学んでいます。
今学期主に履修しているのは、交換留学生向けの授業
この学部で学ぶ交換留学生は必修の授業で、オランダでSpatial Sciencesを学ぶにあたり必要な基礎知識が網羅された授業です。

Compact Cityが点在するオランダの都市政策のルーツに始まり、Water ManagementやMobility、Energy LandscapeからDemographyに至るまでオランダにまつわる様々なトピックについて学びました。
全16回のレクチャーと5回のExcursionを終え、残るは期末試験…というのが通常の流れですが、このコースでは最後の授業として「Role Play」なるものが組み込まれていました。

 

事前の準備は不要と言い渡されていたので、何やるんだろうね〜と友人と話しながら教室へ。
まずはコーディネーターによる簡単なレクチャーが行われ、「さて、今からRole Playを始めます!」と宣言が。どうやらクラス全員で先ほどのレクチャーを議題にしたディベートに取り組む様子。

約30名のクラスメートが10チームに割り振られ、それぞれの役割と議題に対して賛成OR反対の立場が決められていました。与えられた情報はそれだけ。
1時間の準備時間が与えられ、1時間後にはディベート開始と告げられました。

 

〈以下、ディベートの議題の詳しい内容なので興味がある方はどうぞ〉

今回のテーマは、オランダにおける園芸農業の拠点を西部から北部へ移すべきか否か。
大都市(アムステルダムやロッテルダムなど)が集まるオランダ西部では園芸農業(花卉や温室野菜など)が盛んで、輸出額の多くを占めています。
しかし、もともと人口密度の高い西部では、これ以上園芸農業用の土地を確保するのが難しく、産業の伸び悩みに直面しています。そこで、オランダでは地方にあたる北部(私が学ぶグローニンゲン大学は北部に位置しています)に園芸農業の拠点を移そうという案が持ち上がりました。

西部にはヨーロッパのハブ空港であるスキポール空港、またユーロポートと呼ばれる港もあり、輸出に必要な交通網は整っています。
北部には国際空港はないものの、港が完成したばかりで今後の利便性向上は見込めます。また、北部には大規模な発電所があるため、電力消費の大きい園芸農業には適した場所と言えそうです。

〈詳細おわり〉

北部への移転賛成派と、西部にとどまり現状維持を望む反対派の攻防はいかに…!?

 

与えられた役割は、
・北部オランダの地域経済連合(移転賛成
・北部の既存の農業組合(移転反対
・西部で農業を学ぶ学生たち(賛成反対
・有識者としての大学教授(賛成
・西部で園芸農業を営む家族(反対) などなど…

ディベートの役割が書かれたハンドアウト。

1つの役につき2−4名の学生が割り当てられていました。(コーディネーターたちが徹夜で考えたとか。徹夜はたぶん嘘だけど、それぞれの学生の特徴を活かした配役でした。笑)
9つの役割に該当する学生の名前が呼ばれた後、あれ私の名前呼ばれてないぞ、と思っていると
「では、今までに名前を呼ばれてない人は立って。」とコーディネーター。

なんと私と他3名の学生はJury(審査員)役に!
Juryはディベートの議論には参加せず、ディベートの最後に結論を下す役割です。
他の学生に比べて準備に割く時間は少ないものの、ディベート終了後には考えをまとめ、根拠ある理由を述べることを求められます。

1時間の準備時間はそれぞれの役割ごとに作戦を練っている様子でした。

 

いよいよ本番

そうして迎えたRole Play本番。
まさにディベート会場のようにセッティングされた教室へ入り、それぞれの持場に付きます。私たちJuryはやや高い席から全体を見下ろす形に。(裁判みたい。笑)

指定された席に着く様子。机の上には役割が書かれた席札が。

 

説明をするコーディネーター

コーディネーターが簡単にオープニングをした後、
特にファシリテートはしないから。自分たちで発言して進めていって。

内心では(え、めっちゃ放任主義…!うまくいくんかな)と思っていました。

 

しかし、そこからがすごかった。

クラスメートそれぞれがまさに「役者」でした。

 

議論の口火を切ったのは、西部で家族経営の園芸農業を営んできたおばあちゃん集団。(演じているのは20歳のパリピ系女子大生たちです)
「息子たちがあんな遠いど田舎に行くなんて耐えられない、私たちから可愛い息子を奪う気か…!」と泣かんばかりの迫真の演技で場を盛り上げます。
(一同は老婦人風にストールを被って外見もばっちり。)

応戦するのは農業学校に通い、北部移転に賛成する学生たち
「西部のこんな狭い土地ではやってられない。僕は北部へ行って大家族を築き、Potato Queenになるんだ、、!(ディベートでは男子学生が女子の役をやってました)」

エモーショナルに始まった議論でしたが、役割に合わせて理詰めで来るチームも。

Economic Agency(経済連合)は、PC片手にデータを示しながら北部移転のメリットを主張。
有識者である大学教授は、「私の論文では〜」「私が発表した〇〇によると」と自分の経歴をアピールしつつ議論を展開。(教授役には、クラスで1番物知りなインドネシアの留学生が抜擢されていました。)

今回は議論をファシリテートする役割がいないため、それぞれが思い思いに発言し、主張を繰り広げます。

 

審査員席に座る私は、ディベートの様子を必死にメモしながら、次はどんな発言が飛び出すんだろうとわくわくしながら議論を見守っていました。

特に印象的だったのは、普段の授業ではあまり発言しない学生たちも積極的に議論に加わっていたこと。そして何よりそれが楽しそうだったこと。
ときには芝居めいた口調にみんなで笑いながら、同時に真剣に耳を傾け、応戦していました。

 

「最後の授業をみんなで盛り上げたい」という思いがあるからこそ、これだけ熱く楽しい議論ができるような気がします。
そしてただ真面目に議論するだけではないのが海外流。(「海外」と一括りにするのは何か違う気もします。ここがオランダだから?欧米からの留学生が多いから?決定的な理由はわかりません。でも、日本の大学だと必ずしもこうはいかないのかな、と思いました。)
根底には、お互いにその場を楽しむ、という気持ちが共有されていました。

誰よりも率先してエンターテイナーであるコーディネーターのおかげかな。

そして、「お互いをリスペクトして議論する」姿勢も感じられました。

 

審査結果発表

約1時間に及ぶ議論が終わり、審査の時間に。

この時間は各役割を演じた学生たちは休憩、審査員役は20分間でディベートの勝者とその理由を練り上げました。4人の審査員で口頭発表の構造を決め、全員で少しずつ話すことに。

休憩時間が終わり、いよいよ審査発表。

まずは双方の議論の良かった点を挙げ、最後に勝者とその根拠を発表。
私たちが勝者としたのは北部移転に賛成する側でした。データに基づいた議論が多かった点、質問への受け答えがきちんとなされていた点、そして全体として発言回数が多かったことを理由としました。

私もその一部を話しましたが、クラスの視線を一身に浴びて発言するのはやはり緊張しますね…。いつか慣れる日が来るのかな。笑

 

結果はクラスのみんなに納得してもらえたようで、コーディネーターからも賛同の声が聞けて安心しました。いいジャッジができてよかったです。

授業後は全員でキャンパス内のスポーツバーへ移動し、Snack&Drink!(ちなみに無料)
ここはオランダ、Drinkにはもちろんお酒も含まれています。

次の学期からは選択する授業はバラバラ。全員で集まるのはこれが最後です。
お酒を片手におしゃべりを楽しみました。

クラスの集合写真、スポーツバーにて。

 

授業をよりよくするために協力し合うクラスメートの姿勢は本当に素敵でした。
教員だけでなく学生にもこの気持ちがあると、授業はもっとおもしろくなるんだなと実感できました。

そして自然とみんながそう思えるようなクラスを作ってくれたコーディネーターに感謝です!

 

さて、来週はいよいよ初の期末試験。試験勉強がんばります!
以上オランダからひーやんでした〜

この記事を書いた人

ひーやん

2016年法学部入学。18-19年にオランダ・グローニンゲン大学にて、高身長のオランダ人に囲まれながら交換留学を経験した(本人の身長は153cm)。留学先では、学部をガラリと変えて都市政策や人文地理を専攻。地方と都市の関係や環境問題などを地理学の視点から学んだ。地元の島根県が大好きで、海外で得た知見を生かしながら地域と関わる方法を模索中。

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